ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第12章 夜風
エースは黙ってしまった。
「見た記憶からすると、麦わら帽子かぶったゴムの男の子がモンキー・D・ルフィね。風は、彼がここに来るといっているけどまだ少し先かな…」
その時エースがバッと顔をあげた。
「来させるのをやめさせてくれ」
「エースさん…」
「…残念ながら、それは時の流れに任せるしかない」
リンの言葉に落胆するように顔を伏せたエース。
「できないこともないんだろうけど、私の力量では無理。この能力は便利だけどリスクも大きい。それを知ったのはごく最近なんだけどね。知ろうとすることが多ければ多いほど体力は消耗される。帰れるだけの体力は残しておきたいの」
帰ろうとして背中を向けた時、ある考えが浮上した。
「そうだ。これじゃアンフェアだから、私の過去を見せてあげる」
一方的に言い放つとエースの額に右手の人差し指を触れさせる。
「いくよ」
ふわっと風が生まれエースめがけて吹いていく。
その風とともにエースの頭の中にリンの記憶が流れてくる。
「お前…」
「はい、終わり。どう?これでフェア。じゃ、また」
「おい、待て!」
すでに風となってどこかへ行ってしまったリンに、エースは今見せられた記憶を思い返していた。
翌日。
「また、とは言ったがお前…」
「いや、海軍暇なんだ。それよりモンキー・D・ルフィについて教えてほしい」
「…」
なんとリンは、またインペルダウンに来ていた。
「…でな、あいつはほっとけねぇ弟なんだ」
「なるほど…兄ってのも大変なんだなぁ」
「そうだ。心配でしょうがねぇ」
数分後にはすっかり打ち解けていた。
ジンベエは気の抜けたような顔で二人を見ていた。
「それじゃ、また明日!」
「おう!気をつけて帰れよ」
「また、からまた明日になりよった…」
翌日。
「よ!差し入れのおにぎりもってきたよ」
「サンキュー!」
「やりたいほうだいじゃな…肝が据わりすぎとる」
こうして暫く退屈しない日々が続いた。
が、ついにこの日が来てしまう。
《死刑執行決定》
「動き出すのか、ついに…」
リンは窓の外を見つめながらつぶやいた。