ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第12章 夜風
クザンのもとへ来てから数日後、リンはインペルダウンへ来ていた。
クザンに、これからの事を色々手伝わせたいならその囚人に会わせろというと、面倒くさいから風になって行ってこい。話は通しておいてやると言われた。
「しかし…本当に地獄だなここは」
阿鼻叫喚という言葉が似合いすぎる場所だった。
リンの目当ては、火拳のエース。
最下層のレベル6は、暗く、静かな場所だった。
「ここか」
両手を枷で釣り上げられ、頭を垂れているその男の檻に入り、監視カメラの死角に入る。
「誰だテメェ」
「リン。私はあなたを知りに来た」
その時、エースとは違う声がリンに話しかけた。
「貴様…海軍か」
「いや、この前まで海賊だ。殲滅か私が海軍に捕らえられるかの二択を迫られ今に至るという流れでね。七武海、ジンベエ」
「わしを知っとるのか」
「まぁね。で、少し失礼」
リンはエースの心臓の所に手をかざし、目を閉じる。すると、風がリンの足元から生まれる。
「もしかして…その能力は…‼︎」
ジンベエが目を見開く。
「……ポートガス・D・エース。長いからエースでいい?」
「別に構わねぇが、テメェ今なにしやがった」
凄むエースに、リンは無表情でごめん、と言った。
「あなたの風を読んだ。要は、あなたの人生を断片的に見てしまった。許してほしい。でもこうでもしないと今後の風が読みづらい。私が使えないせいで仲間が攻撃されても困る。大切な人達がいるんだ。護る為ならなんでもする。それが今のモットーだ」
ベラベラと言うと、ジンベエもエースもすこし威嚇を抑えた。
「そんな話はどうでもいいとして。いいこと教えてあげる。これからここに、この監獄に嵐のようなものがやってくる。これからってのが明日なのかはたまた一週間後なのかは分からない。風が落ち着かない。大きいことが起こるのは確かだ」
それだけ言うと、リンは座った。
ジンベエは、リンの言葉を頭の中で反映していた。
「大きいことが…」
「ところで、エース、あなたに兄弟はいる?」
「…⁈」
エースは眉を寄せる。
「この前から気になってた。風が運んでくる声にあなたの名前があった。モンキー・D・ルフィ。彼があなたの名前を言ってた」