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ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話

第12章 夜風


「お前の生まれ故郷は今、お前の父親による独裁政治だ」

「……それを私に言う意味は」

「お前を用が済んだらよこせと言われている。これに従わなければ、世界が揺らめくと、上は危惧している」

リンは冷や汗が垂れるのを感じた。

「そんなに…力を持っているのか?」

「あぁ。どっかの闇ルートと繋がったなこりゃ…って感じでめんどくさいんだよねこれが」

リンは了解した、と目を伏せた。

「随分すんなり了承するんだな?」

「世界が揺らぐなんてありえない。けど、私もあの国に用があるのを思い出した」

「へぇ」

クザンは興味深そうに言った。

「それより」

キリッと態度を変えたリンに、少し驚いた。

「クザン、その後ろの標語はなんだ。だらけきった正義って…海軍のイメージがガタ崩れだ」

「そんな細かいこといいじゃない」

「……まぁいいや。で、テラスか何か無いのか。風にあたりたい」

「ここをあけりゃテラスになってる」

クイっと窓を指す。

「ありがとう」

リンはテラスに出ると、風を全身に受けた。

「……ふぅ」

「…一人で生きてきた女ってのは、誰もが落ち着いてんのかねぇ」

クザンに振り返ると、目を細め誰かを思い出すようにしていた。

「その口ぶりから、…いや、詮索するのはやめる」

気にならない、といえば嘘になる。が、クザンの表情から、聞こうという気にはなれなかった。

「お気遣い感謝するよ」

一瞬だけ見せた、弱々しい微笑み。
リンは瞬きをゆっくりして、またテラスの方へと向き直った。


その頃。ハートの海賊船はある島に来ていた。

ビッグマングローブが成す島【シャボンディ諸島】。
同じタイミングで、多くのルーキー達も上陸していた。


「ドレーク屋…お前…何人殺した」


ニヤリと笑みを浮かべるその男は、この時には既にある決意を固めていたのだった。








「クザン、いいこと教えてやろうか」

不意に、リンが口を開いた。

「なんだ」

「近々、面白いことが起きそうだ。明日、もしくは一週間後かもしれないし、そう…今日かも、しれない」

「なんだ、はっきりしねぇな」

「風はそこまで正確には教えられない」

ニッと笑ってみせる。


天竜人が殴り飛ばされたと情報が入るのは、この数時間後だった。
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