第7章 好敵手(ライバル)
その日の練習試合は思った以上に点差をつけて勝つ事が出来た。
相変わらず研磨は相手高校に舐められるみたいで、その油断から生まれる差も勝敗を決めているのかもしれない。
だけど明日は因縁の相手、烏野高校との練習試合。
皆今日だけは空気が違っていた。
ピリピリしているのが分かる。
これでは明日、皆のいいトコが発揮できないんじゃ…
猫又「ちゃん」
『はい』
突然、監督に呼ばれた。
猫又「戦うのは選手だけじゃない。お前さんだって立派なチームの一員だ、勝利のために戸惑う事は何もないんだよ」
『監督…』
猫又「行っておいで」
『っ!はいっ!!!』
そうだ、あたしだって音駒高校バレー部の一員として、皆のために頑張るって決めたじゃないか。皆が明日、全力で伸び伸びと試合が出来るためにも、マネージャーとしてやるべき事がある。
…それにしても、猫又監督はさすがだなあ。何も言ってないのに、あたしの心が読めちゃうなんて。
皆が集まっているであろう寝床に着くと、思いっきり扉を開けた。もちろんノックしないで。
夜久「うぉっ!?って!?」
「オイオイ…お前女だったら男の部屋開けるのに恥じらいとか持てよ」
『あたしは!!』
「「「「?」」」」
クロ君のからかい言葉にも反応せず、あたしはひたすらに叫んだ。
『あたしはプレイヤーでもないし、まだバレー部にきてから日も浅い。それでも皆と一緒にバレーして来て、本当にバレーが好きで強くなりたいって思ったよ』
『いつもの練習風景も好きだけど、この遠征で分かった事がある。皆が試合してる時の楽しそうな顔が好き。だけど今みたく思いつめてると、皆のいいトコが発揮できないと思う。だから…』
「もういい」
クロ君の言葉に、叫んでいた間ずっと俯いていた顔を上げる。
そこには緊張した過去の顔ではなく、いつもと同じ顔をした皆がいた。
夜久「そうだな。バレーで何より一番楽しいって思える時は、勝った時だもんな」
海「それで猫又先生にも恩返しが出来るチャンスがあるなら、それは俺達の力で戦って勝った時だ」
『皆さん…』
「明日は勝つぞ。せっかくマネージャーが喝入れてくれたんだ、無駄にするなよ」
「「「「アス!」」」」
(皆なら大丈夫)