第7章 好敵手(ライバル)
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外に出て、生温い風を体に浴びる。
冷たくもないが、蒸し暑い体育館と比べれば頭が徐々に冷えていくのが分かった。
どう考えてもあたしが悪い。
今は烏野と練習試合中だ。それなのに、敵である飛雄の事を考えて、おまけに変なやきもちまで妬いて。
挙句の果ては、監督とクロ君の言葉に甘えようとした。
あの優しい研磨が怒るのも納得がいくし、何より研磨には悪い事をした。
研磨だけでなく、音駒の皆に。
頭は冷えたものの、この試合はもうベンチには入れない。それだけの事をしたんだ。
だけど、どうしても見たいあたしは、そっとギャラリーから覗く事にした。
同時にボールをぶつけた顔面が、今更になってズキズキと痛んだ。
試合はもう終盤で、お互いに意識し合い、高め合い、成長し合い、実力以上の力で戦っているのが分かる。
それは音駒の皆も、烏野の皆さんも同じ事。
さっきは飛雄に視線が集まってしまったが、無意識の今でも音駒の皆の方に視線が集中するのが分かる。
音駒を応援する自分がいる。
その事に安心を覚え、また、心地良さを感じた。
そして運命の時。
烏野の多彩なる攻撃を、福永君が、夜久ちゃん先輩が拾う。
ダイレクトで返ってしまうが、ボールはまだ落ちない。
そして最後、音駒のコートに落ちると思われたボールを研磨が滑り込みで拾い、そのボールは音駒ではなく、烏野のコートに落ちた。
いつから気付いていたのか、得点を決めた瞬間、喜ぶ前に研磨が、クロ君が、夜久ちゃん先輩が、皆があたしを見てニッコリと笑ってくれる。
ベンチに居なくても、まるで一緒に戦っていたみたいに。
あたしは自分の視界が涙でぼやけていくのが分かったが、自然と笑顔がこぼれた。
ありがとう
その言葉を拍手と共に皆に届くように
(集合だ、早く降りて来い)
(はっ、はい!!!)