• テキストサイズ

いつの間にか非日常

第6章 故郷もいいけど


――




研磨の後ろを黙って歩く。研磨は何も聞いて来ないし、後からクロ君が来る気配も感じられない。




怒らせちゃったな…




きっとクロ君は…ううん、研磨も心配してくれたんだ。それをこんな遅くまで自由に歩き回り、嘘までついてしまった。

実際おばあちゃんにも送ってもらったけど、それでも嘘は嘘だ。



何て謝ろう。そもそも、謝って許してもらえるのかな。




それくらい、怒ったクロ君は迫力があった。





「大丈夫」

『え?』

「クロはあれくらいで怒ったりしない。ただ、冷静じゃなくなる時があるんだ」

『…うん』




幼馴染の、それに研磨の言葉だ。きっと説明すればクロ君も許してくれるだろう。

またあの大きな手で頭を撫でてくれるだろう。






「俺、もう寝るけど。はクロの事待ってる?」

『うん、ちゃんと話したいし謝りたい。ありがとね、研磨』

「ん。じゃあおやすみ」




研磨と暫く歩くと合宿所まで来ていた。中に入る研磨を見送り、近くの階段へと腰を下ろす。

この運動公園は今回あたし達以外に誰も借りていないため、危険な目に合うなどのリスクも無い。

だからこそ研磨も先に行ったんだと思うけど。






上を見上げると満点の空が広がっていた。

そして、一番目立つのは銀色にさえ見える綺麗な月。





『綺麗…』





思わず毀れた声に






「そうだな」







返事が返ってきた。









「言わなきゃいけねぇ言葉はいっぱいあるけど…







おかえり、」









『…ただいま!』











(2人は何も言わず、同時にまた、空を見上げた)


/ 106ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp