第6章 故郷もいいけど
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研磨の後ろを黙って歩く。研磨は何も聞いて来ないし、後からクロ君が来る気配も感じられない。
怒らせちゃったな…
きっとクロ君は…ううん、研磨も心配してくれたんだ。それをこんな遅くまで自由に歩き回り、嘘までついてしまった。
実際おばあちゃんにも送ってもらったけど、それでも嘘は嘘だ。
何て謝ろう。そもそも、謝って許してもらえるのかな。
それくらい、怒ったクロ君は迫力があった。
「大丈夫」
『え?』
「クロはあれくらいで怒ったりしない。ただ、冷静じゃなくなる時があるんだ」
『…うん』
幼馴染の、それに研磨の言葉だ。きっと説明すればクロ君も許してくれるだろう。
またあの大きな手で頭を撫でてくれるだろう。
「俺、もう寝るけど。はクロの事待ってる?」
『うん、ちゃんと話したいし謝りたい。ありがとね、研磨』
「ん。じゃあおやすみ」
研磨と暫く歩くと合宿所まで来ていた。中に入る研磨を見送り、近くの階段へと腰を下ろす。
この運動公園は今回あたし達以外に誰も借りていないため、危険な目に合うなどのリスクも無い。
だからこそ研磨も先に行ったんだと思うけど。
上を見上げると満点の空が広がっていた。
そして、一番目立つのは銀色にさえ見える綺麗な月。
『綺麗…』
思わず毀れた声に
「そうだな」
返事が返ってきた。
「言わなきゃいけねぇ言葉はいっぱいあるけど…
おかえり、」
『…ただいま!』
(2人は何も言わず、同時にまた、空を見上げた)