第6章 故郷もいいけど
及川「ダメだよ。に八つ当たりするのは間違っている。ほら、こんなにもがビビってる」
「っ…すまん」
『いや…えっと…』
及川「とりあえずは部屋に戻りなよ。どうやら迎えも来たみたいだし」
及川とかいう男の視線を辿れば、確かにそこには心配して様子を見に来ただろう研磨の姿があった。
『研磨…』
「おかえり、。クロ、何で怒ってるの?」
「…何でもねえよ。研磨、連れて先帰っててくれ」
「え、うん。行こ、」
『あ、うん…』
研磨に腕を引っ張られながら宿に向かって歩く2人だが、は前を見る事なく俺達2人をずっと見ていた。
及川「ちゃん」
『…?』
及川「俺、本気だから。また連絡するね」
『…ん』
及川「及川さんに会えないからって泣いちゃだめだからね!」
『岩ちゃん先輩や勇太郎、国見ちゃんによろしく』
及川「俺は!?」
どうやらコイツがの先輩というのは本当らしい。
の性格を知った上で、たった一言でいつものを取り戻した。
と研磨の姿が見えなくなるまで、及川は無言でずっと手を振り続けた。
はとっくに前を向いて歩いているというのに。
及川「…俺も合宿中なんだよね。だから…
手短に話そうね」
「…言われるまでもねぇよ」
(その日は、月が一番綺麗な夜だったというのに)