第6章 故郷もいいけど
ー黒尾ー
風呂も済ませ、あとは寝るだけ。
…だが、まだ寝ることは出来ない。
が帰ってこない。
ソワソワしているのは俺だけじゃなく、研磨や夜久たちも落ち着かない様子だ。
もしに何かあったとしたら…
その考えが浮かんでは消し、浮かんでは消しの繰り返しだ。
気を紛らわそうとしているのか、山本達が妙な会話をした。
山本「烏野にマネージャーはいるのか!」
「…なんだよ、そのくだらねえ質問」
山本「だって相手は猫又監督因縁の烏野ッスよ!?マネージャーの有無だけでも勝ちたいじゃないっすか!」
犬岡「じゃあ俺はいる方にハーゲンダッツで!」
芝山「俺も!」
山本「お前らはもっとウチのマネージャーに誇りを持てえ!!」
何の誇りだよ。つーか山本、と喋ってる姿、まだ見てねえけど?と言えば、山本は顔を赤くしながら反論してくるものの、何を言ってるか全く分からない。
ふと研磨を見ると、いつもみたくゲームじゃなくてスマホをじっと見ていた。
きっとからの連絡を待っているんだろう。
「…研磨ー、久しぶりにゲームで対戦しようぜ」
「…クロ、弱いし」
「お前が強すぎんだよ!ハンデもらえば俺も勝てる!」
夜久「後輩にハンデもらうなよ」
ギャーキャー騒いでいると、大音量にセットしていた俺のスマホがSNSメッセージ着信を知らせる。
あれほど騒いでいた奴らが一瞬に黙った。まあ、俺も例外じゃねえけど。
固唾を飲んでメッセージを開く。もうプライバシーも何もあったもんじゃねえ、全員が俺のスマホを覗き込んでいた。今日に限っては許してやる。
メッセージの差出人は、待ちに待っただった。
遅くなってごめんなさい。おばあちゃんが乗せて帰ってくれるみたい。今から帰ります。
実にシンプル、らしい内容だ。
その内容を確認すると、全員が全員落ち着いたように溜息を吐き、車なら安心だと寝る準備を始めた。
「…クロ?」
「…わり、俺迎えに行ってくるわ」
「…ん、分かった」
直井コーチに事情を説明し、ジャージを羽織り外へ飛び出した。
(早くお前に会いたくて)