第6章 故郷もいいけど
及川「ってなわけで」
『納得出来るかあああ!!!』
祖母「あらあらちゃん!おかえり!」
『おばあちゃん!ただいまー!』
祖母「もう、また可愛くなっちゃって。お腹空いてるでしょ、さ!上がりなさい」
相変わらずちゃんは俺の事をガン無視する。昔と違って真っ赤なジャージに身を包んだ彼女。その背中には音駒、ズボンにはバレーボールクラブと書いてある。
ああ、君はもう違うチームのマネージャーなんだね。
どこか遠くへ行ってしまったようで、今度こそ本当に俺の手の届かないとこに行ってしまったようで。
玄関を向いたまま、彼女に背を向けたまま、動くことが出来なかった。
『…及川さん』
及川「何かな?」
『…ただいま』
ちゃんの足音が遠ざかるのが分かる。きっと彼女のことだから、顔を真っ赤にしながら伝えたんだろうな。
…なんだ、何も変わっていないじゃないか。
身に纏っているジャージが違っても、少しだけ伸びた身長も、前とは違う髪型でも…
彼女自身は変わっていない。
及川「っちゃーん!!!及川さんに会えなくて寂しかった!?」
『岩ちゃん先輩!久しぶり!勇太郎も国見ちゃんも、暫く見ないうちに大きくなったねえ!』
及川「及川さんは!?」
『ああ。及川さんは暫く見ないうちにウザさが増しましたね』
(これもまた懐かしいやり取りで)