第6章 故郷もいいけど
暫くすると、朝食を終えた部員達が部屋に戻ってくる足音を聞いた。
助かったと思いつつも、この状況を見られたくないとも思った。
どうか夜久ちゃん先輩が上手く収めてくれますように!!
その願いが通じたのか、夜久ちゃん先輩の声が一番近くに聞こえる。
夜久「ー、あいつら起きた…か…?」
『や、夜久ちゃん先輩~!!!助けて!!!』
夜久「な…何してんだクロ~~~~!!!!」
ドンと衝撃が来たと同時に、クロ君からうっ…と呻き声も聞こえた。
だけど腕の抱擁からは解放されなかった。
「いってー…何すんだよ夜久」
夜久「お前が何やってんだよ!を襲ってんじゃねぇよ!」
「…は?」
『あたし、抱き枕じゃないんだけど』
「…うぉっ!?」
そして今度こそ訪れた、待ちに待った解放感。
多分まだ顔の赤さは残っていたけど、暑いと言っておいたからごまかせたと思う。
クロ君をじっとみると、今度はみるみるクロ君が顔を赤くした。ちょっと面白いかも。
「なななな何でお前がここにいるんだよ!」
『何でって…クロ君と研磨を起こしに来たんだけど?』
「それは夜久や海が…」
『そんな雑務、選手には任せられません。けど、あんな事になるならやっぱ夜久ちゃん先輩達に任せようかな』
いや、ほんと。身の危険とかは感じなかったけど、ああなるとも思ってなかったし。
するとさっきまで慌てていたクロ君が、いつものニヤニヤ顔に戻った。
「…いや、起こしに来るのもマネージャーの大切な仕事だ。明日もお前がやれ」
『はぁ!?それ、無理矢理抱きしめたクロ君が言う台詞なわけ!?』
「無理矢理じゃねぇよ、無意識だ」
『余計性質(タチ)が悪いわ!』
夜久「いや、クロが自分で起きれば問題ないけどな」
ニヤニヤ顔に戻ったクロ君が無性にムカついて、夜久ちゃん先輩の正論はあたしの耳には届かなかった。
(…、うるさい。目覚めちゃった)
(研磨ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!)
(えっ…何?)