第6章 故郷もいいけど
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ギュッと回された腕は力が弱まることも無く、あたしの体をしっかりと抱きしめていた。
起きているのか、それともまだ寝ているのか。
確認したくても顔さえも動かす事の出来ない今、術はない。
『く、クロ君?起きてる?』
「…ん」
『っ…』
なんとまぁ色っぽい声を出すのだろうか、うちの主将さんは。
それに…
研磨とは違う、がっちりとした筋肉がついた体。
力強い腕。
クロ君独特の香り。
研磨には普通に抱き着いたりしてるけど、クロ君にこうやって抱きしめられると、なぜか恥ずかしさが生まれた。
同時に自分の体の体温が上昇していくのが分かる。
それが嫌で、必死にクロ君を起こそうと叫ぶも、起きる気配は全くなかった。
あぁぁぁ…夜久ちゃん先輩と海先輩に絶対に起こすって約束したのに…
『…クロ君、お願い。起きて?』
「…んん……」
『っ…うわ、今の反則』
もともと良い声をしているクロ君。エロいというか、かっこいいというか。
そんな声に加えて寝言のような囁くような超エロボイスで名前を呼ばれれば、必然的に真っ赤になるあたしの顔。
誰に見られるわけでもないけど、必死にクロ君の胸に顔を埋め隠した。
(…)
(だから、だめだってソレ…)