第6章 故郷もいいけど
初めて音駒のみんなの試合を見た。
全体的に守備がかたく、どんなボールでも静かに、しなやかに拾う。
特別優れた選手はいないけど、研磨に綺麗に返そうとする強い思いが伝わってくる。
比べるわけではないけど、北一時代とはほぼ正反対な音駒。
だけど、ちゃんと強い。
というより、うまい。
「俺たちは血液だ。
滞りなく流れろ、酸素を回せ。
脳が正常に機能するために」
クロ君は試合前だけじゃなく、練習中にも時々こんな事を言っていた。
最初は意味が分からなかったけど、今やっと分かった気がする。
脳は研磨。
研磨は観察力が優れている。きっと他人の注意を背けるために他人を観察し続けてきた賜物なんだろうな。
けどそれはちゃんと研磨の強さとして残っている。
「「「「「ありがとうございました」」」」」」
ストレートで音駒の勝ちだった。
研磨だけでなく、山本君のアタック、犬岡君のブロック、全体的に守備力が高い中でも更に芯として守備の中心にいるリベロの夜久ちゃん先輩…
海先輩も福永君もうまい。
「あっちー…東北も充分暑いんだな」
一際しなやかさが目立った、クロ君。
ブロックはまるで鉄板のように堅く、傘のように広い。
アタックは研磨とうまく連携し次々と点を決めていく。
そして何と言ってもレシーブ。
夜久ちゃん先輩より安定感には欠けるけど、誰よりも静かで、誰よりもしなやかだった。
まるで、猫のように。
(どうだった?俺の活躍)
(…クロ猫)
(は!?)