第6章 故郷もいいけど
『研磨、酔うよ』
「うん」
『いや、うんじゃなくて』
泣きながらひっついてくるリエーフをクロ君に引き剥がしてもらい、新幹線に乗ったあたし達。
隣は研磨とクロ君なんだけど、研磨は新幹線移動中にも関わらずピコピコとゲームをしている。
特に何をするでもないあたしは、否が応でもゲーム画面に視線が落ちてしまうのだ。
結果、酔った。
あたしだけ酔った。
「…、大丈夫?」
『あ、うん…大丈夫』
大丈夫じゃない。リアルに吐きそうだ。けど研磨に心配はかけたくないし、責任とかも感じてほしくない。今だってゲームしまわせちゃったし。
「水飲むか?」
『ううん、今はいらない。ごめんクロ君、場所変わって貰っていい?』
とりあえず窓際に座るクロ君と席を交換してもらい、自然を視界に入れた。宮城はもうすぐそこまで来ていて、大自然が迎えてくれる。
それだけで心が軽くなる気がした。
20分くらいボーッとしていると、気持ち悪さはだいぶ減ってきた。タイミングを見計らってか、クロ君から再度水を手渡される。
「だいぶ顔色戻ったな。水飲んどけ」
『うん、ありがとう』
少しだけ緩くなった水が喉を通るのが分かる。奥では研磨がクロ君に寄りかかってスヤスヤと眠っていた。
『ふふっ、研磨眠ってる』
「研磨も心配してジッと見てたんだけどよ、疲れたのか眠っちまった。あとで礼言ってやれ」
『うん。クロ君も、ありがとね』
「気にすんな」
クロ君はいつもやるみたいに、だけど今日は少し控えめにあたしの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
(これもまた、思い出)