第5章 ようこそ、音駒高校排球部へ
あたしがマネージャーを初めてから、初めての休日練習が今日。平日練習と違って休日は午前・午後と時間が長いため、いつもよりドリンクを作る量も多ければ、洗濯の回数も多い。
故にとても疲れる。
特にマネージャーは選手の休憩時間も仕事をしなければならないのに、研磨とクロ君ががっちりとホールドしてくるため、仕事は溜まる一方だった。
まぁ、嫌じゃないからいいんだけど。
そんなマネージャーに唯一ある休憩が昼休憩だ。だけど今日のあたしは休憩が休憩になっていない。
なぜかと言うと…
…いつ渡そう
あたしを悩ませているのは、昨日お母さんと協力しながら(7割お母さん作)作ったアップルパイ。
研磨が食べたいって言ってたのを、今日持ってきたところだった。
お母さんが作ったし、味見もしたから不味くはないと思うんだけど、見た目が…
お母さんにやってもらうはずだったけど、最後くらい自分でやりなさいって怒られた。その結果、市販のものよりかなり美味しくなさそうなのだ。
「、ご飯」
『うひゃぁぁぁっ!!!』
「ぶっ!うひゃぁって何だよ!」
『く、クロ君!驚かさないでよ!』
慌てて持っていた箱を隠すものの、多分確実に見られた。クロ君にはアップルパイの事は話してあったから、絶対ニヤニヤしてる。
…ほらね。
「悪い悪い、ほら行くぞ」
だけどクロ君は何も言わなかった。
それどころか、一緒にご飯を食べようって言ってくれている。
あたしはお弁当とアップルパイが入っている箱を鞄の中にしまい、クロ君の背中を追った。
(その優しさが逆に怖くて)