第5章 ようこそ、音駒高校排球部へ
「お待たせ」
『ううん、お疲れ様!じゃあ行こっか』
「…」
研磨に言われた一言で、の隣を歩くのは少し勇気が必要だった。というよりも、研磨がどういう心境で見ているのかが怖かった。
悶々とマイナス思考を続けていると、いつの間にかと研磨だけが随分先を歩いていた。2人は話に夢中でこちらを振り返るどころか、気付きもしない。
俺はその瞬間、ちっぽけなプライドとか勇気とか、そういうのは全部消え去った。
「」
『何?』
「…ん。行くぞ」
『えっ?ちょ…』
俺はの手を握り歩き出した。斜め後ろで研磨が溜息をついているのが見えるけど、もう関係ねえ。俺は俺のやりたいようにやる。
『待って!ちょ、待ってよクロ君!』
「…悪い」
『もう、本当だよ。それに…』
「!?」
てっきり俺と手を繋ぐのが嫌なんだと思った。依然研磨とが手を繋いでいるのは見ていたから、俺だけ断られたんだと。
だけどはそうじゃなかった。
『引っ張られるより、こっちの方がいいでしょ?』
の手は俺の手とキュッと握り合っていた。
(…クロ、かっこいいか悪いか分からないよ)
(…うるせー)