第4章 非日常、再び
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あたしが…また男バレのマネージャーに…?
冗談じゃない。関わりたくないと思ったばかりなのに、はいそうですかなんて言うと思う?
掴まれた腕を離そうとするが相手は男の人、力で叶うはずがない。
「…クロ??」
研磨だ。
研磨の声が聞こえてきたと思えば、黒尾先輩は絶対に離さなかった腕をパッと離した。なんだろう、この切り替えの早さは。研磨には見られたくないのかな。
何にせよ、助かった。
「…どうしたの?」
『何でもないよ。研磨、5時間目体育だから遅れないようにね。一緒に戻る?』
「…うん、戻る。じゃあね、クロ」
「…おー」
冗談で言ったつもりだったのに、研磨はあたしと一緒に教室に戻った。研磨は何も言わない。それはありがたい事なのに、どうしても気になった。
「…何?」
『あ、ごめん。いや、何も聞かないんだなーって思って』
「…さっきのクロ、いつものクロじゃなかったから」
『…?』
「何でもないよ」
変な研磨、と返せば研磨は少しだけ笑った。笑ったと言っても軽く微笑んだだけだけど。
そう言えばどうして体育館に来たの?と聞けば、体育館に入って行くあたしと黒尾先輩の様子が見えたからだとか。
だけどそれはあたしにとって幸いした。心の中でありがとう、研磨と呟いた。
(ちっぽけなプライドが、消えそうになったから)