第4章 非日常、再び
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あたしにも分からない。何にこんなにも驚いてるのか。
…本当は分かってる。
あれだけ非日常だと思っていた中学時代が、思っていたよりも日常に感じてしまったから。
ただそれを認めてしまえば、あたしは今の日常に満足していないような感じがして嫌なんだ。自分の人生、勝ち負けなんてないはずだけど、精一杯頑張ったあの時を否定したくないけど、それでもなぜか嫌だった。
そのことを顕著に思ったのは、この男…クロ君がやって来てから。
彼の存在は、嫌でも昔を思い出す。お調子者先輩と似たような性格だからではなく、ただ本能的に。
『…あたしには、もう関わらないでください』
「は?」
『今度こういうことがあっても…まあ無いようにはしますけど、見て見ぬ振りをしてください』
あたしは自分の性格を理解しているつもりだ。誰よりも。だからこそ、そんな自分を自分じゃない誰かが乱したり、不向きな事をやろうとは思わない。
「…ちょっと待てよ。理由も言わずにはいそうですかなんて言えるかよ」
『…あなたといると、あたしがあたしじゃなくなるような気がして嫌なんです。あたしという人間は、あたしが1番よく分かってる。それを否定されそうで嫌なんです』
「納得いかねー」
『納得してください。それじゃあ、さようなら。
黒尾先輩」
あたしは目も見る事なく、黒尾先輩の横を通り過ぎた。
(あの人は何も悪くない)
(これはあたしの我儘)