第4章 非日常、再び
『失礼しまーすっと…』
もちろん昼休みな今、体育館には誰もいない。それでも言葉に出したのは、中学時代に熱心な後輩が昼休みさえも練習時間に費やしていたから。
少しその様子を思い出し、後輩の真似をしてジャンプサーブをやってみる。
もちろんやると言っても、ここにはネットもないし、靴なんて無く靴下だけだ。むしろ物が揃ってても後輩の真似なんて出来ないけど、何回も何百回も見たあのサーブは忘れない。
…まあその後輩のサーブもお調子者先輩の真似だから、形そのものは何千回と見てきたから嫌でも記憶に残ってるけど。
とにかく、サーブくらい打つのは自由だ。さっさと打ってご飯食べよう。
右手でボールを少し斜め方向に高く上げ、グッと蹴り出した。
『へっ!?』
蹴り出したはいいけど、靴下は床との相性は最悪で、体制を崩しながらも何とかボールだけは手に当てた。
けど今のは…
「惜しい。今のはネットだな」
『!?』
「あと、高校生がそんな派手な下着履いてるなんてすげーな」
ニヤニヤしながら体育館の扉に寄り掛かっていたのは
まぎれも無く
クロ君だった。
(近付いてくるその姿に、体はピクリとも動かなかった)