第3章 それは友人とは言い難いもので
―黒尾―
部活に向かう途中、部室まであと100mというところで幼馴染の研磨に会った。相変わらずすげー猫背だけど。
「けーんまっ」
「…クロ」
「オイオイ、お前も今日から先輩になるんだから、少しはシャキッとしろよー?」
「いいよ、先輩とか。そういうの面倒臭い」
研磨は少しいじけたように話す。ま、俺には研磨がこういう態度とることは分かっていたけど。研磨は上下関係とか嫌がるからな。特に去年の先輩達がいた時は。
そういう俺も一応研磨の先輩だけど、昔っから上下関係なんかなかったもんな。
そして今日は新入部員が入る。新音駒高校としての第1歩だ。
「…研磨?」
「…何?」
…気のせいか?やけに研磨の機嫌が良いように見えるが…いや、気のせいじゃねぇな。長い付き合いだが、ここまで機嫌がいい研磨は数回しか見た事ねぇ。
「何かあったか?」
「…別に」
「嘘だ。絶対何かあったダロ」
「何もないよ」
「お前、俺に隠し事出来ると思ってんのかぁ?」
研磨の頭をぐしゃぐしゃと撫でると、あっという間に不機嫌になり手を振り払われる。そんな研磨を俺はニヤニヤしながら見てるんだが。
「…友達が出来た。それだけ」
「…は?」
は?あの研磨に?友達?マジかよ!!!!
研磨はずっと1人だった。友達と言えば幼馴染の俺くらいで、ずっとゲームをしているような奴だった。その研磨に友達が出来た…?
「マジかよ!?同じクラスの奴か!?名前は!?」
「…クロ、うるさい。今日から先輩なんでしょ」
あ、逃げやがった。けど、これで諦める俺じゃねぇ。何たって俺は研磨の友達だからな。そんな俺が研磨に出来た新しい友達を見ないわけにはいかねぇ。
明日、教室行ってみっか。
(…クロ、ニヤニヤして気持ち悪い)
(まー気にすんな)