第3章 それは友人とは言い難いもので
『わわっ、ごめん!そうなんだ、運動部なんだ!何部なの?』
「…バレー…」
『えっ!?バレー!?あたし、中学時代に男バレのマネージャーしてたよ!』
「そ、そう…」
そっかー、バレーかぁ!なんて言いながら、さんは懐かしそうに何かを思い出している。
『どこのポジション?』
「…セッター」
『セッター?あー…セッターかぁ…』
「…セッター、嫌い?」
『あっ、そういうわけじゃないよ!?そういうわけじゃないんだけど…中学の頃のセッターの先輩が超ウザくてさぁ。実力はあるのがまた悔しいけど…』
相当嫌な思い出があるのか、さんの顔は笑っていなかった。俺には関係ないけど。
『あ、もうすぐ授業始まる』
「…うん。あの時間に教室出ればこうなると思うよ…」
『あはっ、ごめんね。あたし、昔っから考えるより体が動くタイプみたいでさ…』
よく迷惑かけてきたんだ…と、彼女は言う。
「…そ、それでいいと思う」
『え?』
「無理に変える必要なんてない。…と思う。お、俺もそうだから…」
いくら周りから何を言われようとこの性格を変えるつもりはない。アイデンティティーは誰にでもある。
『…うんっ!ありがとう、弧爪君!じゃあもどろっか!』
(意外な共通点)
(ずっと繋がれた手に、俺は確かに安心していた)
「…研磨でいい。皆そう呼ぶし」
『うんっ!あたしの事もって呼んで!これからも話しかけていい?』
「…あまり騒がなければ」
『あはっ、了解!これからよろしくね、研磨!』
「…うん。よろしくね、」