第3章 それは友人とは言い難いもので
英語の授業が終わった休み時間、すごく苦しかった。さんにジッと見られている。今さんの周りに誰もいないのが幸いだ。
「…な、なに…」
『あ、やっと喋った!』
ビクッ
まるで条件反射のように肩を揺らす。するとさんはすかさず謝ってくれた。
『ああっごめんごめん!脅かすつもりはなかったんだけどさ。弧爪君、良い声してたからもう1回聞きたいなーって思って』
「え…」
『なんか柔らかいけど男って感じ?ちょっと幼い感じも好きかも!』
「そ、そう…」
『えー、もっと喋ってよー!』
俺がゲーム機に視線を移動させると、さんは俺の体をグラグラと揺らし始めた。
「ちょ…やめ…」
『じゃああたしとお喋りしよー!』
さんがあまりにも大きな声で言うから、今ではすっかりクラスの注目の的になってしまった。するとそこへ誰かが助け舟を出してくれる。
男「ー、弧爪はあんま人と関わるの好きじゃねえんだから、無理に話しかけてやるなよー」
別にそういうわけじゃない。俺は人と関わる事よりも、目立つのが嫌なだけ。まあ弁解したところで何も変わらないし、そもそも発言するだけで目立つからやらない。
『そうかなー』
だけど、さんは違った。
『弧爪君は本当に人と関わることが嫌いじゃないと思うよ。きっと…ねえ弧爪君、外行こっか』
「えっ…」
さんは俺の手を取り、簡単に外へ連れ出した。
(振りほどくことも出来たわけで)