第1章 一山いくらの林檎 前
金額だけ見れば、そのまま2000円程度の物をあげれば何もおかしくない。
貸し借り無し、プレゼントありがとう、よろしければまた来年も仲良くしてくださいな。
でも牛尾からすれば2000円程度の物なんて、きっと「こんな使えない物を貰っても」となってしまう。
牛尾の事だ。そんなの顔に出さずに、いつもの飄々とした笑顔で「ありがとう。嬉しいよ。」なんて言ってくれるんだろうけど。
あたしはあんなに嬉しかったのに、あたしは牛尾を喜ばせられないなんて、そんなの嫌だ。
やっぱりプレゼントするからには牛尾に喜んでもらいたい。人間として当然の気持ち。
そして出来れば、あたしも牛尾と肩を並べられるぐらいセンスのいい「出来る人間」として認められたい。
牛尾から貰ったプレゼントをチラ見する。棚に鎮座するプレゼントの包装紙は、サイトとそっくりのスタイリッシュなデザイン。
・・・あたしもあれぐらいスタイリッシュな物が似合う人間になりたかったな。
それに比べて牛尾さんのスタイリッシュさよ。時代の最先端とか開拓者ってレベルじゃないね。もう彼は未来を生きてるよ。彼が未来だ。彼が時代だ。彼が世界を作っていくのだ。
「あたし酔ってるなぁ・・・。」
くだらない思考回路に、でもあながち間違いじゃない思考回路に、格の違いを感じて心底げんなりした。
改めて気付いた。牛尾って将来は牛尾財閥を、日本を代表する大企業を背負う御曹司なんだよなぁ・・・。
あたしは牛尾みたいにセンスのいいプレゼントなんて思い浮かばない。
お値段がもうちょっと上がればプレゼントの幅も広がるだろうけど、それは対等な関係でいられないから却下。
例え奮発して牛尾に似合うような高級ブランドなんかあげても、それはあたしの生活が苦しくなるだけだし。
「どないせえっちゅーねん!」
あたしは半狂乱になってベッドに身投げした。