第4章 1つで5桁のメロン 後
まさかあたしの企みに関して謝られるとは思ってなかったあたしの胸で、良心がズキズキと音を立てて痛んだ。
「あの、悪い事をしたのはあたしなんだし・・・えっと・・・。」
何だっけ・・・そうだ、返事。
「牛尾財閥の財産がどうとか言ったけど、あたしは結局そういう理由で抱かれようとしたんじゃないと思うの。」
今度はあたしが仰向けになった。
「挿れていいよって言った時に、あたしの中ではもうお金とか地位とかどうでもよくなってたの。」
牛尾が仰向けになった理由が分かった。恥ずかしいのね。目なんて合わせられないわ。
「そもそも嫌いだったら抱かれようと思わないし、なんだかんだであたしは牛尾をやっぱり人間として好ましい人だと思ってるって気付いたの。」
へへっと馬鹿みたいに笑ってしまった。牛尾からの視線は無視した。牛尾はどんな顔してるかな。
「牛尾はあたしを嫌いになった?」
「いいや。むしろ偏ったイメージを押し付けて甘えてて、申し訳ない気持ちでいっぱいだよ。」
「・・・あたしも全く同じ気持ち。」
ごろりと寝返って牛尾と向かい合う。もうおちゃらけない。お互い真剣な表情。
「あたしは牛尾があたしに対して壁を作ってると思ってたけど、そう思い込む事で壁を作ってたのはあたしだったんだね。」
ごめんね、と呟いて牛尾に引っ付く。
「好きか嫌いかなんて分かんない。牛尾がどんな人間かもよく分かってない。」
返事になってるのかよく分からない。不安定で曖昧な言い回し。
「牛尾の事、何1つ分かってない。だから判断出来ない。だから・・・これから牛尾の事をもっと知りたい。」
でも今のあたしにはこれしか言えない。
「あたしを大切にしてくれる牛尾を、あたしも大切に出来るようになりたい。」
たくさんの素晴らしい人達に埋もれてしまっている、一山いくらの林檎であるあたしに魅力を見いだしたあなたを。
金額やブランドみたいな見た目だけで無く、きちんとあなたというメロンの味や魅力を知りたい。
そうしたらきっと、大好きな牛尾に好かれているあたしの事も、あたしは好きになれるだろうから。
結局は汚くてずるくて、独りよがりで自分勝手な返答。
それでもこれが、あたしの本当の気持ち。