第4章 1つで5桁のメロン 後
「いつから・・・あたしの事・・・。」
「プロジェクトが終わってしばらくしてから。」
牛尾が腕を出してくれて、あたしはおずおずと腕枕をしてもらった。
「研究とか仕事で単純作業なんかしていると、ぼんやりと考え事をしたりするだろう?そんな時に、土井さんを思い浮かべる自分に気付いたんだ。」
淡々と語られる牛尾の気持ちに、あれだけ知りたいと思っていたあたしは恥ずかしさを感じていた。
・・・そりゃあ「君の事を思い浮かべていたんだ。」なんて言われたら、誰だって恥ずかしくなるわよね?あたしおかしくないわよねぇ?
「それで、もしかしたら僕は土井さんの事が・・・と思って、だからまずはデートしてみようと、土井さんをご飯に誘ったんだ。」
ふっと微笑まれて頭を撫でられる。
「そうやって何回か会って、やっぱり素敵な人だなって確信したんだ。」
確かに頭には牛尾の手の感触があるのに。何だか全てが信じられるようで信じられなかった。
じゃあ、もう2年近くも前から、あたしの事を好きでいてくれたの?
あたしみたいな女に、一途に片思いし続けたの?
あぁ・・・ご飯も、誕生日プレゼントも、研究協力も、あのお姫様抱っこも。
「あたし、1つも気付かなくて・・・。」
「そうなんだ?まぁポーカーフェイスしてたつもりなんだけど、とっくにバレてると思ってたよ。」
牛尾は「確かに僕、何考えてるか分かんないってよく言われるからなぁ。」なんて、してやったり顔で呟いた。
「あたしと付き合いたいなんて言うのも、お世辞でそういう事をさらっと言える人なんだと思ってた。」
「そんな事、誰彼構わず言ったりしないよ!」
「そ、そうだろうけどさ!牛尾って女の子の扱いとか上手そうだし!」
「あれ?僕が男社会で生きている人間だって事、忘れちゃったの?」
・・・言われてみればその通りだ。