第4章 1つで5桁のメロン 後
牛尾は顎に手を当てて考え事をしているようだった。
あたしはただぼんやりとその姿を眺めていた。
しばらく無言の時間が続く。
「・・・仮にだよ?」
ようやく牛尾が口を開いた。
「仮に僕が土井さんを抱きたいと言ったとして、土井さんは了承するのかい?」
ぽかんと拍子抜けしてしまった。
それは牛尾が慎重だからとかではなくて、笑いさえ含んだ妙に明るい口調で話すから。
「いいよ?」
つられてあたしも軽く答えてしまった。
「え?」
「だから別にいいって。」
牛尾は相変わらず半笑い。
「牛尾に抱かれてもいいって思ってなきゃ、ご飯に行ったり家に上がったりしないよ。」
言って少し自覚した。
あたしは牛尾の事を「気に食わない」とか「理解不能」とかいろいろ言っていたけど、結局は牛尾という人格が好きなんだ。
恋愛感情ほどじゃないけど、これだけ素晴らしい人なんだ。好ましくないはずが無い。
嫌いなのは、気に食わないのは、情けない自分自身。
本当は牛尾に似合うぐらいの素晴らしい人間になりたかったんだ。
なのにあたしはこんな事を言って、心の底から無様なゴミに成り下がってしまったのだ。