第4章 1つで5桁のメロン 後
牛尾が何を考えてるか、これからどう考えるか、そんな見えない事は馬鹿なあたしには1つも分からない。
観察しても悩んでも、仮説は所詮仮説でしかなくて、本当の事なんて分からない。
だったら逆に考えてみよう。あたしはどんな行動を取れば得になる?
留年という人生の落伍者に待っている未来は、授業と研究の両立、就職難、勝ち組からの嘲笑だ。
そんなクズに与えられた、牛尾御門という世界でもトップクラスの人間との繋がり。これを利用しない手は無い。
今は牛尾の部屋で2人きり。これからきっとあの日のようにお泊まりしてベッドで添い寝するんだろう。
じゃあもう、規制事実を作ってしまえば?
抱かれたという事実さえあれば、つまりは彼女になったり伴侶になったり、何なら財産を頂戴出来るんじゃないだろうか?
大切なのは「好意」ではなく「行為」だ。
「なぜそうしたか」ではなく「何をしたか」が全ての判断材料になり得る。
あたしは牛尾に抱かれました。
そこまで行かなくても、家に上がるぐらい親密な関係だったら。
無能なあたしでもどうにか持ち合わせている、女の武器をフル活用すれば、あるいは。
そうだ、これはクズに与えられた、這い上がるための最後のチャンスなんだ。
ぷつんと音を立てて、あたしの脳は考える事を止めた。