第4章 1つで5桁のメロン 後
優しい手だなぁとか、頭がぐるぐるするなぁとか、ふわふわと浮き上がったように感想が浮かぶ。
・・・牛尾は何を考えてるんだろう?なんで頭を撫でるんだろう?
ぼんやりしているあたしの顔を見て、突如牛尾がプッと吹き出した。
「土井さん酔っ払ってるね、顔真っ赤。」
「えっ?そんなに?」
「うん。」
牛尾があんまりおかしそうに笑うものだから、両手で自分の頬に触れてみた。熱い。
「すごいなぁ。林檎みたいだよ?」
牛尾はそんなあたしの様子を見てさらに笑った。
・・・林檎。
そうだ、あの日もそんな話をしてたっけ。
「そうよねー。どうせあたしはお安い林檎ちゃんよ。」
「・・・急にどうしたんだい?」
あたしの頭を撫でていた牛尾の手が止まって、あたしの頭から離れて行った。
「牛尾ってさー、果物で言うならメロンって感じ。」
あたしはお酒で回らない舌をどうにか回しながら、のったりと吐き出すように言葉を続ける。
「優しくて、甘くて、見た目もいいし、実はどっしり頼りがいもあって、それに高級。」
牛尾はメロンの中でも最高級品に違いない。世の中には1つで5桁のメロンが存在するというけど、きっとそれだ。
味や見た目は完璧、みんなから愛され求められている果物。非の打ちどころの無さが牛尾みたい。
「何よりなかなか食べられないぐらい希少価値の高いところが、牛尾そっくりじゃない?」
あたしはその辺に転がっていて、お安く食べられて、簡単に廃棄される林檎だもの。