第3章 1つで5桁のメロン 前
「どうする?研究は諦めてワインでも飲むかい?」
「どうしてそうなるのよ。」
「ほら、僕はお酒が好きだから。いいワインがあるんだ。土井さんだって好きだろう?」
はい好きです。牛尾の出して来るお酒には外れがありませんものね。じゃなくて。
くそぉ。どうすれば牛尾に勝てる?
試しに泣き落とし。上目遣いで牛尾をうるうる見つめる。
「研究協力、してくれないの・・・?」
牛尾ほどのジェントルマンだったら、弱っている女の子に酷い事なんて出来ないわよね?
「家に招待してくれたらね。」
「ちっ。」
「豹変っぷりが露骨すぎないかい?」
思わずした舌打ちに牛尾からのツッコミ。これだけ可愛い子ぶってもダメか。牛尾の意志こそ頑だ。
牛尾は例の飄々とした笑顔に、意地の悪さまで加えた表情をしていた。
「いつまでもこんな押し問答をする必要も無いじゃないか。思い切りは大事だよ?」
「あたしに言わせればそっちこそ折れろ。」
「折れようが折れまいが、僕はインタビューに答えさえしなければいいんだ。そうなったら土井さんは研究サンプルが減って困るよね?」
その通り過ぎて本気で腹が立って来た。紳士の肩書きはどこに行った?早く取り返してこい。
いっそ呪ってやろうか。コンビニでお弁当を買って研究室に帰って開けてみたら箸を入れ忘れられててお弁当が食べられない状況に陥る呪いをかけてやろうか。