第3章 1つで5桁のメロン 前
頑な態度を取るあたしに、牛尾は意外にも引き下がらなかった。
「大丈夫だよ。綺麗なんだろう?前に土井さんをアパートまで送って行ったけど、綺麗なアパートだったじゃないか。」
「外観はそうかもしれないけどさー・・・。」
別にあたしは誰も部屋に入れないわけじゃない。たまには数少ない友達を入れる事もある。もちろんその時は部屋を大掃除するんだけど。
でもこんな部屋の持ち主を、大豪邸出身の奴を入れるとなると・・・ハードルが棒高跳びぐらいまで跳ね上がりますよ。大掃除どころかリフォームしたくなっちゃう。
押され気味なあたしの様子を察したのか、牛尾はとどめを刺しにかかった。
「研究協力は土井さんの家に招待してもらうのと引き換えって事でどうだい?」
「はぁ!?」
コイツ、人の足下見やがって・・・!
もはや身を乗り出して睨むあたしを、牛尾はあの飄々とした笑顔で受け流す。
「僕もこんな事をするのは胸が痛むんだ。」
「じゃあ止めなさいよ!」
「何も気にする事無いのに頑なのは土井さんだろう?」
「ぐぬっ・・・。」
本当にどうしたんだろう、今日は妙に意地悪だ。今まで兆候が無かったわけじゃないけど、いつもの爽やか紳士っぷりはどこに行った?