第3章 1つで5桁のメロン 前
「さて、どうしようか?」
考え終えたらしい牛尾は軽く伸びをして、今後のスケジュールに思考をチェンジする。
「どうしようねー?」
いつもなら夜まで空いているコーヒーショップかバーにでも行ってだべってる時間。夜は長い。
「鳥居さんの明日の予定は?」
「夕方まで特に無し。牛尾はどうせ朝から研究でしょ?」
「好きでやってる事だけど、ブラック研究室は辛いね。」
ははっと笑う牛尾は、言葉の割にいつもの余裕ある顔付きだった。
・・・あ、そうだ。
「あのさ、あたしの卒業研究の手伝いしてくれない?」
「手伝い?」
「うん、あたしのインタビューに15分程度答えるだけ。ボイスレコーダーで録音するけど誰にも聞かせないから。今から来年の卒業に向けてやってるんだけど、サンプル数が足りないんだよね。」
「面白そうだね。いいよ。」
「ありがとう!」
快く了承してくれた牛尾。あたしは鞄にボイスレコーダーがあることを確認した。
「場所はどうしようかなぁ・・・。」
「雑音が入らない方がいいよね?お店は苦しいか。」
うーん、と2人して頭を捻る。
お店はダメ。大学もこの時間だと難しい。あたしの家・・・はとてもお見せ出来ません。
「僕の家に来るかい?」
牛尾の提案は、さも当然のごとくさらっと飛び出した。
あんな事があった後でこの提案は驚きだった。どう考えても避ける選択じゃないのか?
言葉に詰まった。思わず牛尾を凝視した。でも牛尾は何とも無さげな顔。
そんな態度をされたら、断る方がおかしいようにさえ思えた。
「じゃあ、お願いしようかな?」