第3章 1つで5桁のメロン 前
「牛尾さー。」
「ん?なんだい?」
「なんでプロジェクトが終わってからもあたしと会おうと思ったの?」
思った疑問をそのまま口にしてみた。
一番最初にご飯に行こうと誘って来たのは牛尾だ。それもプロジェクトが終わって半年も経ってから。
牛尾の事だからきっと研究や家の仕事で忙しくて、こうやってのんびりした時間を作るのも大変だろうに。そういった時間があったら1人でゆっくり休みたいと思うのが普通じゃないだろうか?
例え誰かとくだらない話で盛り上がりたいとかあったとしても、牛尾ならもっと素晴らしい友達がいっぱいいて、逆にご飯に誘われる事も多いだろうに。
・・・わざわざあたしなんか誘わなくても、向こうから言い寄ってくる素敵な女の子が周りにいっぱいいるだろうに。
牛尾はフォークを置いて水を一口飲み、口角を上げて笑みを作った。
「簡単だよ。プロジェクトで土井さんと話してると楽しかったから、また会いたくなった。それだけさ。」
「・・・楽しかった?」
「うん。素敵な人だなぁって。」
相変わらずの爽やかな笑顔を向ける牛尾に、あたしは言葉を失った。
これはお世辞だ。分かってる。この発言はコミュニケーションを円滑にするためだけの、中身の無いからっぽな空気の振動だ。
例えそれなりに本心だとしても、それにはさほど深い意味は無い。ただの友達。その程度。
変に浮かれて勘違いして、あの時みたいに変な行動をしてはならない。
コイツはあたしの事なんて何とも思ってない。むしろ面倒で嫌いだと思ってる。それぐらいのつもりでいないと。
あたしはこれ以上牛尾に対して深い関わりをしてはならないんだ。