第2章 一山いくらの林檎 後
今日はいろいろありすぎて、あまりの展開について行けないんですけど。
「・・・仕方ないなぁ。」
あたしは自分にかけられていた布団に牛尾の体を入れてやる。
眠る牛尾の頭を撫でると、気のせいだろうか笑ったように見えた。
「ふふっ。」
こんな無防備な寝顔を見れる日が来るなんて誰が思っただろうか?そう考えてみると、牛尾は本当にあたしに甘えてくれてるんだろう。つまりは心を許してくれてると言う事で、あたしも牛尾の支えになれてるのかもしれない。
「えいっ。」
調子に乗ったあたしは牛尾の鼻を緩く持ち上げた。豚みたいになった鼻で牛尾の端正な顔立ちがバランスを失う。
・・・こうやって、かっこよくない所も見せ合える仲になりたいな。
牛尾の事、もっといっぱい知りたい。本当の牛尾が知りたい。
友達とか恋人とか、そんな肩書きなんてどうでもいい。
ただ、牛尾にとってかけがえのない大切な人になりたい。
ふと、今日起こった事を根本から思い返してみた。
そうだ。そもそもあたしがプレゼントのリクエストを聞こうと「ご飯に行こう!」って誘ったんだっけ?
「プレゼントのお返し、かぁ。」
今晩こうしている事がプレゼントのお返しだとすると、あたしの添い寝はお金に換算すると2000円だってわけだ。
あたしに一晩甘えることに2000円の価値があると言うのは、なかなか悪い気がしなくもない。こんなのこれからいくらでもしてあげるのに。甘えてもいいかな?なんてそんな他人行儀にならなくても・・・。
「・・・まさか。」
あたしは気付きたくないような、でも気付かなければならない事に気付いてしまった。