第2章 一山いくらの林檎 後
例え子供のごっこ遊びみたいな例え話でも嬉しい。
牛尾の立場がどうとか、好きでいてくれた事とか、あたしは牛尾に対して恋愛感情を抱いていないのにとか、そんなのどうでもよかった。
ただあたしを1人の人間として認め、幸せになって欲しいと願ってくれる事が、たまらなく嬉しかった。
「じゃあ、まとめ買いで10%割引にしますね。」
なのに天の邪鬼なあたしは、冗談みたいな言い回ししか出来なくて。
「いいね。大学生にはありがたいよ。」
それでも牛尾は笑顔で乗ってくれる。
「社会人並みに収入があるくせによく言うよ。」
「実は半分社会人なんだよ?」
「そうだったね。」
そんなこんなであたし達は笑い合いながら、どちらからともなくベッドに横になった。
あたしは・・・牛尾を好きになれるだろうか?
自分の事も好きじゃないあたしが、人を好きになれるだろうか?
だってすでに、お似合いじゃないとか、釣り合わないとか、そんな事ばっかり考えてる。
辞めときなよって、後悔するよって、今すぐにも叫んでしまいたい。
でも・・・牛尾があたしを好きでいてくれるのなら、あたしもあたしを好きになれそう。