第3章 戦利品との過去はないが
と特に進展のないまま社員の一部は長期休み、いわゆる夏休みに入ろうとしていた。
一斉に休んじまったら商売が成り立たねぇから、夏休みを三分割にして順番に休んでいく。俺は一番最後に振り分けられた。まぁ長期っていっても2週間程度だから海外への長旅はそんなにのんびりやってられないだろう。俺みたいな宝が大好きな奴は特にな。
「…あ、休み、明日からか」
ふとスケジュール帳を開くと、丁度明日から休みだと日にちに大きく赤く丸の印がつけられていた。俺も浮かれていたんだろうな…。
「長曾我部殿」
「お、真田…社長」
「構いませぬぞ!気にしないでくだされ」
今は残業時間だから俺と真田以外は仕事場に見当たらねぇ。
普段は製造をやっているが、俺等みたいな入りたての奴らは研修を重ね、経験を積んでからじゃねぇと製造ラインには立たせてもらえない。それまでは会社の中で書類整理やらなんやらをさせられる。
いつか俺もあの製造ラインに立って立派な車作りてぇな…あわよくば本多を…。
「…い、いかがされた?」
「あっ?!あーいや!なんでもねぇなんでもねぇ!ははは!!」
「そ、そうでござるか、して…明日から確か夏休みでござるな?」
真田も片手にスケジュール帳を持って、予定を見ている。
流石社長の手帳と言ったところか。赤や青、それに黄色や付箋などで彩られたスケジュールで夏休みなどないのがよく分かる。苦労してるんだな…。
「そうだが、なんだァ?仕事の延長なんてのはごめんだぜ?」
「そのようなことはせぬっ!た、ただ頼みがあって…」
「頼み…?」
深刻そうな顔でスケジュール帳をパタンと閉じて俺の両手を握りしめて、本ッッ当に言いにくそうな顔で
「某の代わりに合コンに出てくだされ!!!」
と、叫んだ。