第11章 戦利品。
どうやら俺はを強制退院ということで連れてきちまったらしい。
最初は院長も反対しまくっていたらしいがからも必死に頼んでくれたらしく、強奪みてぇな形で連れてきちまったんだと。
「…私に何て言ってくれたかも覚えていないの?」
「え、えぇと…」
正直覚えてねぇ。
の表情を見れば、とても大切な事を言ったらしい。こりゃあ自分で思い出さなきゃ申し訳なさすぎる。
「…!」
俺がの腕を引いて会社の地下駐車場に行き、車にを押し込んだときか。
すっと記憶が一つ流れ込んで来ればその様子を順に追って分かるように脳が理解し始めた。
「…俺は…言ったな」
「えぇ、とっても、嬉しかったわ」
「はは、俺ァ夢中になると周りが見えなくなるタチでな」
「わかってるわよ」
昼間なのにもかかわらず少し薄暗くて車臭い駐車場で、必死に出口へ向かっていた時。助手席のは呟いていた。
「後悔してないの?」
その声は今までの冷たく、鋭い声じゃなかった。
震えていて、何かに縋り付くような声。
「なんの後悔だよ」
「私を選んだことよ、過去に囚われ続けるのよ」
囚われ続けるのはゴメンだ。だからここでと共に生きて、幸せを掴んで、後悔のないように生きて、生きて、逝くんだ。
そう言ってやればは隣で涙を流していた。
「…幸せに、しなさいよ」
「ったりめぇだろ、…愛しつくしてやる」