第11章 戦利品。
俺とが平成で出会ってから5年が過ぎた。
長かった。
俺はこの瞬間を待っていたんだ。
「ー」
愛しいヤツの名前を呼ぶ。
「おい、?」
…呼ぶ。
「…い、いねぇのか?」
…いるハズだろ…?!
俺は思い切りドアを開け放った。
だがそこにはの姿が見えない。いるのはの着替えを手伝っていた女共だけだった。
「は」
「いらっしゃいませんでしたか?」
あちらに、と指をさされたのは海岸。
ここは海がよく見えるところだ。しかもその海は、俺の愛した瀬戸内海。
「ー?」
「はい」
澄んだ声が俺の耳に届いた。
海岸の岩場には座り込んで砂をいじっていた。一体こんな大切なときに何をしてやがんだ
「おい、そろそろ戻らねぇと」
「ねぇ、私達って、この海で繋がったようなものよね」
「ハァ?」
何を言い出すんだ、何を…
「…昔の話引きずり出すなよ」
「ごめんなさいね、辛いのはお互い様よ」
そうか、には昔から愛してくれていたヤツがいたんだもんな。いや、今もきっとヤツはそうだろう。
アイツは今のと昔のは別人だとハッキリ分けているようだが、頭の中では諦めきれてねぇことぐらい俺にはわかる。にもわかっているんだろう。
その上で俺を選んだ。
もう礼しかいえねぇ。