第10章 戦利品と毛利と俺
俺は再び病室の前に来ていた。
毛利って奴ぁ…なんつーか、モトは優しい奴なんだろうな。さっき俺の携帯に会社から連絡が来た。ゆっくり休めってな。
多分、いや、絶対毛利がまわしてくれたんだろう。俺とがゆっくり、時間をかけて話せるようにってな。
「…おい、、入るぜ?」
またしても無言だった。やっぱり外をずっと見てやがる。
「さっきな、毛利とあったんだ」
「…元就、様に?」
こっちに向けられたその目は何処かうるんで揺れているように見えた。もしかして、毎日この無機質な病室で一人過去の記憶に泣いてたっていうのか?
「あぁ、アンタが毛利に話したことも聞いたぜ」
「…そう」
儚げに微笑んだはそのまま視線を俺から外して目をつぶった。
「でもな、アンタの好きな野郎の事は聞けなかった。直接聞けって言われちまって」
毛利を差し押さえての心をその手にした野郎の事は是非とも聞いてみてぇもんだ。あの毛利を負かしたんだぜ?
たとえソイツが俺の親友だとしても、全く知らねぇ野郎でも、俺は受け止める覚悟だ。仕方ねぇ、俺は過去にコイツにとんでもない事をしちまったんだから。今更を無理矢理とどめておくなんてこと、そんな事しちまったら罰当たりだろ。
「…私は、前、元就様をあんなにも愛していたわ」
「あぁ」
「でも、何故かしらね。再び求婚されたというのに、全く心を元就様へ向けることもできなかった」
そこまで惚れさせたのは誰だ?殺してやりたい、いや、今度こそには幸せになってもらいてぇ。俺はソイツが誰であろうと、俺は、俺は我慢しなくちゃならない。
「好きなの、あんなに忌嫌っていたのに…ッ今、今この瞬間も、思いを馳せているの」
「…誰、なんだ?」
「…馬鹿、ね。私が忌嫌っていた人物何て…一人しかいないじゃない?」
「それって、オイ」
「……長曾我部元親、あなたよ」
その時見せてくれた笑顔は、酷く儚げで、脆かった。