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戦利品は己の手で:続

第10章 戦利品と毛利と俺



「テメェっ…テメェっていう奴は!!」

「場を弁えよ」

やっと正気を取り戻した俺は此処が病院内だということを思い出した。
握りしめたこの拳をすぐに下ろすことはできなくて、目の前でただ崩れ落ちそうになってる俺を見ているだけだった。
無性に腹が立った。何でこいつと俺はこれ程にまで違うんだ、を心の底から幸せにできるのは毛利しかいないのか、と。

「…我はわざわざ貴様に言うことがあって追ってきたのだ」

「俺、に…?」

「そうだ、ここでもいいが人通りが多い。屋上へ行くぞ」

毛利はいつになく俺に口を開く。いつもはこんな奴じゃねぇ。必要以上に話しかけたりしねぇし、必要な事を俺に言うとしても一言二言で済ませる奴だ。
そんな奴が俺に対して聞いたことがないくらいに言葉を並べる。これは相当焦っている状況でしかありえねぇ。毛利が焦るって、なんのことだ?まさか、の事だったりするのか?


「…で、なんだ、毛利サンよォ…」

「……が記憶を取り戻したのは知っておろう?」

毛利の表情は無駄に悲しそうだった。
なんだってんだ?こんなに感情を露わにしやがって…。

「当然、我との事も思い出しておるだろう」

「…だろうな、アンタとが、…夫婦だってな」

俺の口からは言いたくなかった。認めたくなかった。
まるで俺からを拒絶してるみたいじゃねぇか。内臓がキュウキュウ言ってやがる、俺は、俺は毛利との関係なんて…そんな

「我はをもう一度手に入れたいと思った」

聞きたくねぇ。聞きたくねぇ。やめてくれ

「一度しか言わぬ、よく聞け」

駄目だ、その先を言ったら俺はどうにかなっちまう。この手でアンタを殺してしまうかもしれねぇ。突き落として、アンタを殺して…ッ

「…は我を」

「…ッ」

俺は思わず目を強くつぶった。


「我を…受け入れなかった」




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