第9章 戦利品の✘✘が戻る
病院の受付で俺が会社の同僚だってことを言うと受付の女はすぐにの病室を教えてくれた。
俺は急いでがいるという病室に向かうべくエレベーターを呼ぶよりも走って行った方が早いと階段を駆け上がった。
「ッ!」
ガラっと扉を開けるとは一人でぼうっと外を眺めていた。
真っ白な無機質の空間には電子音も何もなく、の近くに置いてある雑誌でさえも読まれた形跡などなかった。
「…おい、」
名前を読んでもこっちを向くことなくはただひたすらに窓を見つめる。降ってくる雪が楽しいのか。
「夏休みぶりだな」
そう言えばは悲しそうな目で俺の方を見た。
その視線に、俺はゾクっとした。この怯えるような、怒りを含んだような目に俺は見覚えがあったからだ。
「……?」
名前を呼べば拒絶するように俺をその鋭い目つきでにらみつけてくる。なんだ、夏休み中に会ったとは別人じゃあねぇか。
「……なんで入院してるんだ」
そう問い掛けても答えてくれなかった。
「事故にでもあったのか?」
「うるさい」
の名前を再び呼んでみても、うるさい、と一言発した後は何も答えてくれなかった。
まるで、まるでこのは平成のではないようだ。俺と楽しげに笑ってくれるじゃぁなかった。
あの、だった。
戦国の世で俺の殺されただった。