第9章 戦利品の✘✘が戻る
それからというもの、には一度も顔を合せなかった。
夏休み中だからという事だろうが、一切連絡もないし、しても出てくれることはなかった。心配して家までいきインターフォンを押すも全く反応がなかった。
何かあったのかと思い会社の方に聞いてみるも猿飛は知らないっていうし、真田とも連絡が取れない状況が続いた。
「…結局なんもしなかったな」
政宗と酒でも飲もうかと思っても相手は大企業の社長サマだ。俺との為だけに仕事をすっぽかすことができるわけがなく、右目の監視の下で軟禁状態らしい。
そうこうしている間に夏休みは過ぎ去って行った。
外には出たが何もやる気が起きなくて結局すぐに家に戻る。何度もそれを繰り返してため息をついた。
そして夏休み明けの出勤日。
「あー夏休み抜けねぇな…」
コレは一種の鬱状態だ。誰にだってあるだろ?長期休みの後にくるあのダルさ。
夏休みなんてさっさと終わっちまえばいいのにって思っていてもいざ終わるとなるとなんだか急に動くのが億劫になってさぼっちまう学生とかいるだろ?俺もそのタイプだったな…
「ちーっす…長曾我部ですー」
「おっ、ちゃんと来たんだなぁ、元親の事だからサボるかと思った」
「馬鹿なこと言うなって、俺ァもう学生じゃないんだぜ?」
同僚の奴らにいじられながら自分の席についてパソコンを起ち上げる。俺達新入りはまだ製造ラインに立てるわけでもなく、未だにパソコンとにらめっこってわけだ。
いつまでこれが続くんだかわかんねぇがな…。
わけのわからねぇデータをパソコンの画面に打ち込んで、たまにデザインの方に行って書類を受け取って上司に渡す。
たとえるならこの作業は入りたてのテニス部とかで見られる光景だ。よく聞かねぇか?新入部員とかは先輩が売ってるときはボール拾いに行かされるって話。まるで今の俺等はそのテニス部の新入部員だ。ここで俺たちは先輩に認められねぇと上に立つことなんざ到底できねぇ。
だから今この瞬間をどうにかして生きなければならねぇ。でなければ製造にまわる事なんかいつまでたってもできない。