第5章 戦利品とショッピング
それからまた新しいジュースを頼んでそのバンドの話をした。
慶次達のバンドは高校生の軽音楽部から始まったものでバンド名もその当時から変わってねぇみたいだ。なんだか忘れちまったが。
慶次はベースで、たまにボーカルやってる器用な奴だ。
「あの人ベース凄いわよね、指ちぎれないのかしら…」
「結構指の皮が剥がれちまうらしいな」
「大変なのね…」
慶次の指はもう俺より硬くなっちまっている。ベース魂だとか言って誇りに思ってるらしいが。
「…あっ、そろそろ行くか?」
「えぇ、ごめんなさいね、私の趣味の話ばかり」
「いいんだ、気にすんなよ。俺が聞きたかっただけだからな」
友の人気も俺は聞いていてうれしいし、何よりの事が知れたのは何よりもうれしい事だ。
「じゃあ、何を買いに行くんだ?」
「炊飯器とポットを」
「…買い替え時期か」
「そんな所よ」
家電を買い求めるため家電量販店へと向かった。
俺は機械が得意だし、ここでいいところを見せておかねェといつ見せるんだってな。
取り柄が少ない俺にとってこれは好機だ。邪魔者はいねぇし、ここなら二人きりで楽しむことができる。
「炊飯器とポットだな?」
「悪いわね、ほんと、車まで出してもらって…」
「気にすんなって」
助手席に座るは前を向いて流れてくる景気を楽しんでくるかのようだった。
暑いのにもかかわらず窓を全開にして風を感じ、目を細めている横顔は笑っているようだった。