第1章 生還
「俺は霧嶋絢都だ。お前は?」
「……友香」
「苗字は?」
「分からない…」
「は?」
「私、記憶が無いの…」
そう、私には記憶が無い…
覚えているのは、友香という名前と、元“人間”だったということだけ…
“喰種”という存在は、記憶を無くし放浪しているうちに知った
そして、自分の体が人間よりこの“喰種”という存在に近いことも…
そのことを彼に説明すると…
「じゃあ、お前元人間なのかよ…」
アヤトという少年の目がみるみる憎悪に満ち溢れる
「うん。だから、こんな体で生きていくぐらいなら死にたいの…」
「ハァ?こんな体だと?てめぇ…、人間風情が喰種を下に見てんじゃねぇよ…」
彼の手が伸びてきて私の首を締める
「かっ…、はっ……っ」
気道が塞がれ、既に息をすることができない
(っ…、殺してくれる気になったの、かな…?)