第1章 生還
〝アオギリの樹〟から与えてもらった、自分の住処(普通の人間と変わらない家)に戻り、ベッドへ女を放り投げる
(何やってんだ、俺は…)
殺し損ねた上に、自分の家に持ち帰るとか、ありえねぇ…
「にしても、コイツ…」
傷の治りが“普通の喰種”より異常に早い
“食事”もしてないのに、俺が開けた腹の風穴が塞がりかけてやがる
クンクン___
「それに、妙に旨そうな匂いしてんな…」
吸い寄せられるような甘い匂いが鼻を擽る
別に“食”に拘りが無ぇ俺にとって、食糧である人間なんてどれも同じだ
ましてや喰種であるコイツを“旨そう”と思うことが驚きだった
(まあ、今は考えるだけ無駄だな…)
「……とりあえず、風呂でも入るか」
コイツの返り血でベッタベタになっていた服を脱ぎ捨て、俺は風呂場へ向かった