第1章 生還
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「綺麗……」
そう呟いた女の顔は穏やかに微笑んでいて、それからすぐに気を失った
「んだよ…それ……」
振り絞ったような声が自分の口から漏れ、瞳が赫眼から元の目に戻る
死ぬ間際だってのに、何だよその胸糞悪ぃ言葉は…
何でそんな穏やかに笑ってられんだよ…
思えばコイツは最初から変だった
抵抗もしねーし、手応えが無さ過ぎる
まるで“殺されたい”みてーな…
「チッ…。コイツの思い通りにしてやるのは御免だ」
俺が腹から手を引き抜くと、女はドサッと地面に崩れ落ちた
「フンッ、てめぇは地面に這いつくばってろ」
そうぶっきらぼうに言い放ち、その場から立ち去ろうとすると…
「……。」
女の言葉と顔が何度も頭を過って、俺の足を止めた
「チッ……」
気付けば、何故か俺は女を抱えてその場を後にしていた