第1章 生還
壁に叩きつけられた私が地面へ落下する前に、少年は私のお腹へ手を突き刺した
ズボッ__という音がして私のお腹に風穴が開き、口と腹から大量の血が噴き出る
「何だ、お前。全然手応えねぇなぁ。俺は弱い奴が嫌いなんだよ」
少年は突き刺した手を動かし、私のお腹を更にグリグリと抉る
「うっ、あ……ぐぁ」
「もっと血反吐出し尽くすまでいたぶってやろーか?あ?」
少年は不敵に笑い、瞳が黒と赤の喰種特有の色へ変わる
そして、少年の背中から羽のようなものが生え「トドメだ」という言葉と共に、結晶のようなモノが少年の周りに散らばった
「……!」
朦朧とする意識の中で、何故かその少年の羽と結晶が鮮明に見えた
真っ黒な世界で、初めて色を目にしたような感覚…
「綺麗……」
気付けば、そんなことを呟いていた
(やっと死ねる……)
そう思うと自然と表情が緩み、そこで私は意識を手離した