第3章 猶予
「友香、どうした?」
「ううん、何でもない…!それよりたくさん教えてくれてありがとね、アヤト君」
「別に…。つーか、お前赤ん坊みてぇだな」
「どういう意味?」
「何も知らねぇ、糞餓鬼だってこと」
「っ〜〜、そうだけどもっと他に言い方あるでしょ!」
私がプクゥと頬を膨らましながら抗議していると、アヤト君に「そういうとこも餓鬼だな」って馬鹿にしたように笑われてしまった
普段、しかめっ面のアヤト君が笑うのはかなり珍しいというか…、初めて見たかも…
何だかそれが嬉しくて、胸の辺りがぽかぽか暖かかった
アヤト君の家に居候させてもらって約3週間、アヤト君は出逢った最初の頃より、少し雰囲気が柔らかくなったと思う
人間を“ゴミ”だと言い張るアヤト君が、何故元人間の私にここまで優しくしてくれるのかは分からなかったけど、きっと喰種になってなかったら出逢えてないんだろうなぁと思うと、初めてこの体になったことを感謝できる気がした