第13章 死神
女王陛下から貰った手紙を読み返しながら、ミカエルのいれてくれた紅茶を飲んでいた頃。
「お嬢様、何度手紙を読み返したところで事態は進展しませんよ?」
「わ、わかってる……。ただ、本当に私に出来るのかな? って」
だって、私は当主になったばかりで知識も少ないし、何より暴力沙汰になった時にどうしたらいいのだろう。ミカエルが熱心に教えてくれた武術諸々、まだまだ足りないところばかり。
大きく深呼吸して、ミカエルを真っ直ぐ見つめた。
「まず、聞き込みなんてどうかしら。その周辺の警察……とか!」
「そう上手くいくでしょうか。女王の命、と言いましても表社会を取り仕切る警察が手を貸してくれるとも考えにくいですよ」
「それじゃあ……何か、ドラッグ関連に詳しい人、とか」
「アリスお嬢様は当主になられて日が浅いですからね。頼れる繋がり、というのも皆無でしょう。やはり、ここは独自に調査を進めるのがいかがでしょうか」
確かに、彼の言う通りではあった。当主になり立てで、しかも当主にしては年齢が一般的なものに比べると若すぎる。でも、素人の私達がきちんとした調査なんて出来るのだろうか?
「この私、ミカエルが御命令とあらばエンジェルドラッグに関する情報を集めて参ります」
「そんなこと、出来るの?」
「ええ、ヴァインツ家の執事ともあろう者が、それくらい出来なくては」
この手紙は、私宛のもの。それを彼にほぼ任せてしまうというのも……。