• テキストサイズ

黒執事 Blood and a doll

第12章 鮮明



「お嬢様、他の者達は貴女のいらないものでした。いらないものは、捨てた方が部屋は綺麗になります。貴女の小さな心の部屋には、どうにもできない悪意に満ちた人間達への憎悪でいっぱいでしたでしょう?」


 そんなこと、ない。私は感謝しているし、どんな理由でも私を引き取ってくれた叔母様達に感謝している。


「貴女のご両親、事故だったらしいですね。けれど、本当はどうなのでしょう? 馬車に撥ねられたそうですが……それは不運な事故なんでしょうか」

「何を、知っているの?」

「馬車に撥ねられるよう、ご両親の身体を押したのは親族一のとあるお一人と記憶しております。つまり……貴女のご両親の死は、事故ではなく立派な殺人事件です」


 耳鳴りがした。目を見開いては、聞こえた言葉が現実なのかそうでないのか、わからなくなる。だって……だって両親は、不慮の事故で……。


「元々、このヴァインツ家は名家らしいですね。その全権ともなると、親族達がいつご両親の命を狙ってもおかしくなかったでしょう。しかし、唯一の誤算はその馬車に貴女がいなかったこと。もしもの時の為に、自分達がなくなった後の全ての権限を貴女に委ねる準備を終えていたこと」

「そんなの……嘘よ」

「本当ですよ。だから、叔母様は貴女を引き取ったのです。貴女の保護者としてなんとかして、貴女を利用して権限を横取りしようと」

「そんな……こと」

「現に、貴女は忌み嫌われていたんじゃないですか? その容姿と相まって」


 言いたかった言葉を、執事さんは根こそぎ奪って行った。根の一本も引っこ抜かれた私は、しかめっ面をして泣きべそをかき始めるくらいしか出来なかった。

/ 205ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp