第12章 鮮明
「ねぇ、執事さん。他の人、どこ?」
「さあ……? ご自分で、確かめてみてはいかがでしょうか?」
執事さんの手を借りて、ベッドから抜け出す。手を握られ、そのまま連れられるように部屋を出た。
おかしい。
だって……いつもなら、部屋を出れば誰かの叫び声か、生活音くらいは最低でも聞こえてくるはずなのに……物音一つしない。
「出かけているの?」
「さあ? どこから見て参りますか?」
「えっと……じゃあ、厨房」
「かしこまりました、お嬢様」
違う歩幅で、辛うじて執事さんが私に合せてくれる。ゆっくりと厨房へと向かえば、ふと……焦げ臭いことに気付く。どういうこと?
「執事さん、焦げ臭くない……?」
「言われてみれば確かに。こんがりと、焼きあがってしまったのかもしれませんね」
不敵な彼の笑みが怖くて、急いで厨房の中へと飛び込んだ。
「……なん、で……?」
辺りを見渡す。そこにあったのは、頭をオーブンに突っ込んだ見慣れたシェフと、包丁を何本も身体に突き立てたメイド達。
「執事さんっ!! 皆が! 皆がっ!!」
怖い、怖い、怖い! 何が起きているのかわからなくて、彼にしがみ付いた。どうして? なんで皆死んでいるの? この屋敷に、何が起こっているというの?
「大丈夫ですよ、お嬢様。さあ、次は何処を見て参りますか?」
「っ……!!」
小さな身体で走った、彼の元を離れ遊技場、浴室、客間、大広間、皆の個人部屋。何処にも誰も、いない……?