第11章 終焉
「坊ちゃん、そろそろ私達は帰りましょう。これ以上長居するのは御迷惑です、馬車の用意をして参ります」
「ああ、そうだな」
部屋を出て行ったセバスチャンに、シエルはくすくすと笑みを零した。
「なぁ、アリス」
「な……何よ」
「また、会いたい」
「……う、うん」
「どうやらうちの執事も、君を気に入っているみたいだしな」
「それは勘違いなんじゃないの?」
「さあ? どうだろうな」
ようやくアリスの屋敷を出たシエルは、アリス達に見送られながら馬車に揺られていた。
「いかがでしたか? 坊ちゃん」
「そうだな……アリス・ヴァインツに妙な動きはなし。引き続き観察を続ける、とでも女王に報告しておけばいいだろう」
「それでよいのですか?」
「構わん。彼女のことが、僕はもっと知りたいだけなのだから……」
シエルはスケジュール帳を開いて、一つバツをつけた。そして、視界の端に見えた十月三十一日の文字。そこに大きく、丸をつける。
「次はこの僕、ファントムハイヴ家にご招待しなくてはいけないな」
「そうですね……坊ちゃん」
手帳を静かに、閉じた。